2008 |
10,19 |
なんちゃって医学検証のネタ探しのため、マラリアについて調べてたら良いネタはいりました。
ほら、武松って登場時瘧=マラリアにかかってたじゃないですか。にも関わらずあんな冗談みたいな治り方してるじゃないですか。ありえない話です。あんなんで治ってたら現代でもなおマラリアが世界を悩ます感染症であり続けるはずがない。
たまたま登場シーンが自然治癒か治療の最終段階だったとしか思えません。
でも[futurematic]のみろ様の考察(うぇいしゃんま?)でもありましたが、「中国でマラリアってどこで拾ってくるの?」「治ってるけど特効薬あるの?」という疑問がありました。
というわけで、「そもそもマラリアなんかじゃなくて別の病気なんじゃない?」と思ってマラリアと誤診しそうな病気を調べてたんですね。
でもそれっぽい病気がなかなか見つからない上に、日本でもマラリアらしき病気は昔からあったようだということも分かり、「どこで拾ってきたかは知らんがやっぱマラリアかも」という気がしてきました。今とは違う感染経路があったかもしれないしね。
そこで路線変更。治療薬を探してみました。
一応、マラリアの薬といったら普通キナの木から採れるキニーネという物質なんですが、これって原産地アンデスだし、後に開発されたクロロキンは第二次大戦頃の産物だし……というわけでこれは使えない。
で、昔からマラリアあるなら漢方にも何らかの薬があるだろうと思って調べてみたら、ありました。
鴉胆子(ヤダンジ)と、黄花蒿(おうかこう)。
鴉胆子はニガキモドキというニガキ科の植物を原料とする生薬で、主成分のQuassinoids(カシノイド)という物質が抗マラリア活性を持つようです。ところがQuassinoidsは分離や抽出が難しい物質で、2002年に阪大の薬学研究科が初めて効率的な合成に成功した模様。
Quassinoidsは日本でも取れる甘茶にも含まれているらしい。
◇大阪大学薬用資源化遺跡学分野HP
黄花蒿はクソニンジンというキク科の植物を原料とする生薬で、これから抽出されるArtesunate(アーテスネート)という物質(およびその誘導体)がマラリアの特効薬であるらしい。Artesunateは青蒿素(チンハオス)とも言う。どうやら抗がん作用もあるらしい。
中国の桂林製薬がArinate(アリネート)という名でマラリア治療薬として開発し、これと他の抗マラリア薬との併用療法を推奨しているらしい。国境なき医師団も導入を歓迎している模様。
◇MSF、マラリア治療の新薬の導入を歓迎(国境なき医師団日本)
◇マラリア特効薬のアーテスネート(artesunate)世界保健機構がヨモギ・パワーを全面的に推奨(ノギボタニカル健康機構)
さて、有効成分を含む漢方生薬が見つかったところで、次なる問題は原産地。
ニガキモドキは検索したらインド・マレーなどの熱帯という情報が出たんですが、キク科ニガヨモギ(ヨーロッパ~シベリア原産)と情報が交錯気味なのでとりあえず放っておくことにします。どっちにしろそんなもんどっから手に入れて来いと。orz
一方のクソニンジンは日本にも中国にも……というか世界中ほぼ何処にでもある。(日本のは中国から薬草として渡ってきたあと野生化した)ともかくありふれた草のようなのでより入手しやすそうなのはこっちだろう。
さて治療。
抗マラリア薬研究の進歩(PDF)という東邦大学の論文によると、タイで血液の5%が感染した多剤耐性重賞熱熱帯熱マラリア患者にArtesunateを単剤投与(静脈注射)したら6週間後の再燃率は26%だったらしい。……噛み砕くと、4人に3人はArtesunateでふた月で治ると。再燃が起こるかどうかは体内のマラリア原虫の量によるらしい。
即効性なのはいいけど水滸伝の時代に注射とかないだろー、と思ったら錠剤と坐剤もあった。他剤併用の例しか記述にはなかったけど経口投与の方が効果的。坐薬の適用はどうやら小児みたい。
結論。
薛っちゃん、武松のために糞人参採っておいで。
合成方法は後で調べる。今回はちょっと疲れた。
水滸伝との出会いの書は陳瞬臣・手塚修監修の漫画『中国の歴史』。初恋の人は林冲ですが何か。
山田章博と田中芳樹とKOKIAが大好きです。
『幻想水滸伝』も大好きだけど水滸ネタが尽きてきたならいい加減名前だけ使うのやめて欲しいぞ。(´・ω・`)