2010 |
02,07 |
ドラマ版は観たことのないのですが、『仁 -JIN-』。こいつの原作漫画を友人から借りました。
まだ5巻までしか読んでないのですが、面白いですね!
それに「なんちゃって医学検証」やってる身としてはもっと早く読んでおけばよかったなーと思う作品です。
この作品で注目すべきはやはりペニシリンの合成ですね。
あれ、確かに理論的には不可能じゃない方法だと思います。
というのも、いま私がいる医薬品化学講座の研究室でもあれに近いことをやっているんです。
細菌を培養したりとかはしないんですが、生成物を精製・抽出する作業はうちの研究室では当たり前のようにやってることなので、何だか親近感湧きます。
という訳で、『仁』のペニシリン製法(3巻126~128ページ)を今の実験室での工程にあてはめてみます。
①米のとぎ汁と芋の煮汁を混ぜて培地を作る
実際に実験室でよく使われるのはアミノ酸や糖などを加えた寒天培地です。
培養する細菌によって培地の組成は色々です。
②青カビを移植し、1週間ほど培養
培養専用の保温機がありますので、実験室ではそういったところに入れて培養します。
尚、余計な菌が入り込まないようにシャーレの蓋は閉め、テープで密封します。
③培養液を綿をつめた漏斗でろ過し、ろ過した液体の中に菜種油を注ぎ攪拌する
欲しいのは培地ではなく、培地の上の生成物(ペニシリン)なので、要らない培地とカビ菌本体を除去します。
油を入れるのは作中にもあるように脂溶性物質と水溶性物質をわけるためですが、実験室では油の代わりにクロロホルムやトルエンを使います。
なお、攪拌は分液ロートという器具に入れ、これをシャカシャカ振って混和することで成ります。
因みに私はこの作業が大好きです。(笑
④水の部分(清々培養液)だけを取り出し
これも実験室では分液ロートを使って行います。分液ロートの下側にあるコックを操作することで水層だけを取り出すことが可能です。
ペニシリンは水に溶けやすい物質なので水部分を取り出す訳ですが、うちの研究室では目的物質が脂溶性なので水層は捨て、油層を取り出します。
⑤活性炭にペニシリンを吸着させ、カラムに詰めまず水で洗浄、次に酸性水(酢)を通し、最後にアルカリ水(海草の煮出し液)を通す
すいません。バッチ法は専門じゃないのでよく解りません。orz
が、カラムは実験室で使います。多くはガラス製のオープンカラムクロマト管で、うちの研究室では活性炭ではなくシリカゲルをつめたものを使います。
ペニシリンは基本無色なので分かりにくいですが、色のついた物質だと極性によって成分ごとに帯状に分かれているのが見ることができます。(バンド)
バンドについては作中でろ紙クロマトグラフィーの描写があるのでそちらを見てもらった方が分かりやすいかと思います。
尚、酸性水・アルカリ水を入れる理由は作中の通り。
⑥分画
この工程は研究室と同じです。
少量ずつ取って、一番目的物質が沢山含まれているものを使います。
目的物質の含まれている量はわざわざ培地に乗せなくとも分析機器を使えばごく少量のサンプルを使って知ることができます。この辺は文明の利器万歳ですね。
多くは研究室では分析機器としてNMR(核磁気共鳴)、GC-MS(ガククロマトグラフィー/質量分析)、IR(赤外線分光法)などを使うと思います。勿論うちの研究室もそう。
因みにNMRは強力な磁石を使うのでNMR室に入る時は携帯電話や磁気カード類は一切持ち込めません。壊れてしまいますから。(笑
……とまあ、こんな感じ。
ついでに言うと作中では後に高濃度のペニシリンを精製するのにペーパークロマトグラフィーを使っています。
うちの研究室で作ってる者は脂溶性のものが多いので、吸水性の高い無水硫酸マグネシウムなどを入れて水分を飛ばした後エバポレーターという減圧蒸留器で溶媒を飛ばし、そのあとでカラムに通すというようなことをやっています。
『仁』を読んでいると、自分でもこういう原始的な方法でペニシリン作ってみたいな~とか思っちゃいますね。
卵とはいえ化学者の性でしょうか。(笑
ところで、「なんちゃって」では北宋末期の科学技術的に不可能ということで抗生物質の使用は考えないことにしていますが、『仁』のやり方なら作ることは(理論的には)可能です。
ただ、この方法は病気が微生物によるものだという考え方が存在することが前提。
北宋末期にそういった考え方は存在しないと思われるので、残念ながらあの方法を「なんちゃって」及び『星降る』に導入することは出来ないでしょう。
凄ーく、残念ですけど。
微妙に私信。
弟のタオルの趣味に関する後日談。
本日弟の受験に付き添った母が東京に出てきたので弟が気に入った例のピンクタオルを持って来てくれました。
これでしたw
うーん。写真で見るよりは落ち着いた色合いだったけど、やっぱり大学生になろうという男の子が持つには……。(笑
という訳で、このタオルは私が責任もって没収しましたw
めでたし、めでたし。
まだ5巻までしか読んでないのですが、面白いですね!
それに「なんちゃって医学検証」やってる身としてはもっと早く読んでおけばよかったなーと思う作品です。
この作品で注目すべきはやはりペニシリンの合成ですね。
あれ、確かに理論的には不可能じゃない方法だと思います。
というのも、いま私がいる医薬品化学講座の研究室でもあれに近いことをやっているんです。
細菌を培養したりとかはしないんですが、生成物を精製・抽出する作業はうちの研究室では当たり前のようにやってることなので、何だか親近感湧きます。
という訳で、『仁』のペニシリン製法(3巻126~128ページ)を今の実験室での工程にあてはめてみます。
①米のとぎ汁と芋の煮汁を混ぜて培地を作る
実際に実験室でよく使われるのはアミノ酸や糖などを加えた寒天培地です。
培養する細菌によって培地の組成は色々です。
②青カビを移植し、1週間ほど培養
培養専用の保温機がありますので、実験室ではそういったところに入れて培養します。
尚、余計な菌が入り込まないようにシャーレの蓋は閉め、テープで密封します。
③培養液を綿をつめた漏斗でろ過し、ろ過した液体の中に菜種油を注ぎ攪拌する
欲しいのは培地ではなく、培地の上の生成物(ペニシリン)なので、要らない培地とカビ菌本体を除去します。
油を入れるのは作中にもあるように脂溶性物質と水溶性物質をわけるためですが、実験室では油の代わりにクロロホルムやトルエンを使います。
なお、攪拌は分液ロートという器具に入れ、これをシャカシャカ振って混和することで成ります。
因みに私はこの作業が大好きです。(笑
④水の部分(清々培養液)だけを取り出し
これも実験室では分液ロートを使って行います。分液ロートの下側にあるコックを操作することで水層だけを取り出すことが可能です。
ペニシリンは水に溶けやすい物質なので水部分を取り出す訳ですが、うちの研究室では目的物質が脂溶性なので水層は捨て、油層を取り出します。
⑤活性炭にペニシリンを吸着させ、カラムに詰めまず水で洗浄、次に酸性水(酢)を通し、最後にアルカリ水(海草の煮出し液)を通す
すいません。バッチ法は専門じゃないのでよく解りません。orz
が、カラムは実験室で使います。多くはガラス製のオープンカラムクロマト管で、うちの研究室では活性炭ではなくシリカゲルをつめたものを使います。
ペニシリンは基本無色なので分かりにくいですが、色のついた物質だと極性によって成分ごとに帯状に分かれているのが見ることができます。(バンド)
バンドについては作中でろ紙クロマトグラフィーの描写があるのでそちらを見てもらった方が分かりやすいかと思います。
尚、酸性水・アルカリ水を入れる理由は作中の通り。
⑥分画
この工程は研究室と同じです。
少量ずつ取って、一番目的物質が沢山含まれているものを使います。
目的物質の含まれている量はわざわざ培地に乗せなくとも分析機器を使えばごく少量のサンプルを使って知ることができます。この辺は文明の利器万歳ですね。
多くは研究室では分析機器としてNMR(核磁気共鳴)、GC-MS(ガククロマトグラフィー/質量分析)、IR(赤外線分光法)などを使うと思います。勿論うちの研究室もそう。
因みにNMRは強力な磁石を使うのでNMR室に入る時は携帯電話や磁気カード類は一切持ち込めません。壊れてしまいますから。(笑
……とまあ、こんな感じ。
ついでに言うと作中では後に高濃度のペニシリンを精製するのにペーパークロマトグラフィーを使っています。
うちの研究室で作ってる者は脂溶性のものが多いので、吸水性の高い無水硫酸マグネシウムなどを入れて水分を飛ばした後エバポレーターという減圧蒸留器で溶媒を飛ばし、そのあとでカラムに通すというようなことをやっています。
『仁』を読んでいると、自分でもこういう原始的な方法でペニシリン作ってみたいな~とか思っちゃいますね。
卵とはいえ化学者の性でしょうか。(笑
ところで、「なんちゃって」では北宋末期の科学技術的に不可能ということで抗生物質の使用は考えないことにしていますが、『仁』のやり方なら作ることは(理論的には)可能です。
ただ、この方法は病気が微生物によるものだという考え方が存在することが前提。
北宋末期にそういった考え方は存在しないと思われるので、残念ながらあの方法を「なんちゃって」及び『星降る』に導入することは出来ないでしょう。
凄ーく、残念ですけど。
微妙に私信。
弟のタオルの趣味に関する後日談。
本日弟の受験に付き添った母が東京に出てきたので弟が気に入った例のピンクタオルを持って来てくれました。
これでしたw
うーん。写真で見るよりは落ち着いた色合いだったけど、やっぱり大学生になろうという男の子が持つには……。(笑
という訳で、このタオルは私が責任もって没収しましたw
めでたし、めでたし。
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1985/08/16
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今春から大学院生&ペーパー薬剤師。
水滸伝との出会いの書は陳瞬臣・手塚修監修の漫画『中国の歴史』。初恋の人は林冲ですが何か。
山田章博と田中芳樹とKOKIAが大好きです。
『幻想水滸伝』も大好きだけど水滸ネタが尽きてきたならいい加減名前だけ使うのやめて欲しいぞ。(´・ω・`)
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